「しぇ」「じぇ」
テーマ:方言
2011年04月19日 09時38分
海は、春のうねりです。
波が高くて、網を持てません。
こないだの日曜日に、ブリが1100本ほどありましたが、昨日今日と朝は持てませんでした。
「女心と春の空」
と、言いますけれど、春の海もころころ変わります。
これ↑は、昨日の写真ですけども、雲の色が、手前は濃く、奥ほど薄くなっているのがわかりますか?
三段くらいになっていますね。
こんなふうに雲の色が段々になっているときは、
「これから荒れてくるぞ」
というしるしだそうです。
漁師の知恵ですね。
ちなみに今日は気持ちいいくらい晴れていますが、沖はうねっております。
白波寄せています。
昼に持てるかどうか…。
さて、こないだ探偵ナイトスクープを見ていたら、
「ざ行が発音できない母」
という依頼が来ていました。
兵庫県の方なんですが、「ざじずぜぞ」が、「だぢづでど」になってしまうらしいんですね。
ザ行がダ行になってしまうんだそうです。
なので、孫の名前が「禅(ぜん)ちゃん」なのですが、祖母が言うと「でんちゃん」になってしまう。
「お宅のお孫さん、名前は何ていうの?」
「でんです」
「え?」
こんな会話が、ご近所で繰り返されてきたそうです。
アナウンス学院の先生も必死で教えて、何とか矯正できたようですが、最後、「ぜんちゃん」と言えたときには、この祖母の目に涙が浮かんでいました。
西田敏行局長の目にも涙が浮かんでいました。
まあそれはいつものことなんですけども(笑)。
こういうケースは珍しいことではなく、例えば沖縄だとカ行がタ行になったりします。
これは、実は発音のしやすいほうに寄っていっているんですね。
カ行よりもタ行のほうが発音しやすいのです。
その証拠に、赤ちゃんはなかなかカ行が言えません。
まだ舌足らずに、「ネコ」が「ネト」になったりします。
番組を見ながら、そういえば尾鷲でも同じようなことがあるなぁ…と感じました。
もっとも、「発音のしやすさ」ではなく、「古い発音が残っている」ことからくる方言ですし、しかももう消えかかっているんですけども。
尾鷲のジイヤン・バアヤンは、「せ」が「しぇ」に、「ぜ」が「じぇ」になります。
ですから例えば、
「先生(せんせい)」が「しぇんしぇー」
「千円(せんえん)」が「しぇんえん」
「全然(ぜんぜん)」が「じぇんじぇん」
「戦前(せんぜん)」が「しぇんじぇん」
になるんですよ。
もし尾鷲で「禅ちゃん」という孫が生まれたら、その祖父母は、「じぇんちゃん」と呼ぶでしょう(笑)。
高校時代の教頭先生は、わかりやすい尾鷲弁でしたので、校内放送でいつも、
「しぇんしぇーがた、しぇんしぇーがた、職員会議を開きますので、職員室に集まってください」
とアナウンスされていました。
では、「果たしてこの「しぇ」「じぇ」がいったいどこから来たのか?」ということなんですけども、その答えは意外なところにありました。
実は、もともとは「しぇ」「じぇ」が標準語だったのです!
「えー?!」
と驚く気持ちはよくわかります。
まあ私の話を聞いてください。
室町時代から安土桃山時代にかけて、日本にはポルトガル人がやってきて、キリスト教、銃などが伝来しました。
昔、歴史の授業で習いましたよね。
イエズス会。
フランシスコ・ザビエル。
1549(いごよく)広まるキリスト教。
その当時、宣教師らは日本でキリスト教を広めるため、まず身につけなければいけないことは、「日本語」でした。
キリストの教えを伝えるために、日本語を学ばなければいけません。
今の時代、駅前留学すれば済むのですが、当時はそうもいきません。
というか、はるばる海を越えて日本にやってくること自体が命がけです。
現代に例えると、月に行くようなものでしょう。
それでも、「神の教えを世界に」という一途な思いで、宣教師たちは世界に船を進めたわけです。
(もちろんそれ以外の目的もあったでしょうが)
そんな宣教師たちのために、「日葡辞書」という辞書が作られました。
この辞書には、約32000ほどの語彙が収録されています。
それによると当時の日本では、「せ」「ぜ」に当てはまるところに「しぇ」「じぇ」が使われていることがわかったのです。
サ行は、時代とともに変化してきたのですね。
当時の都は、京都です。
都で使われている言葉はすなわち、標準語です。
ということはつまり、「しぇ」「じぇ」は昔、標準語だったということなんですよね。
おもしろいことに言葉は、京都から同心円状に波及し、遠くに行けば行くほど古い言い回しが残っているのです。
尾鷲は紀伊半島にあり、直線距離で考えると京都から近いのですが、交通手段が限られた陸の孤島だったので、こういう古い言葉が残っているんですね。
残念ながら現在尾鷲で、この「しぇ」「じぇ」は、若い人たちのあいだではもうほとんど見られません。
70代以上に残っているだけではないでしょうか。
日本の言葉の歴史を感じることができる貴重な方言なのですが、きっと近いうちに消えてしまうでしょう。
ちょっと寂しい気もしますが、言葉は時代とともに移り変わるものですから、やむをえません。
そんなわけで、あなたもぜひ、尾鷲で(昔の)標準語を使ってみませんか?
BGMは、陰陽座の「おらびなはい」。
せっかくなので、方言が使われている歌を…。
あ、かなりハードロックなバンドなのでご注意を…。
「おらぶ(叫ぶ)」「ちばける(ふざける)」というのは、岡山方言です。
ちょっと前に、「ぼっけえきょうてえ」という本が出版されて話題になりましたが、あれも岡山ですね。
ちなみに「とても怖い」という意味です。怪談本ですね。
そういえば岡山方言は、「でーかでーこんてーてーて(誰か大根炊いといて)」ってのも有名ですよね。
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波が高くて、網を持てません。
こないだの日曜日に、ブリが1100本ほどありましたが、昨日今日と朝は持てませんでした。
「女心と春の空」
と、言いますけれど、春の海もころころ変わります。
これ↑は、昨日の写真ですけども、雲の色が、手前は濃く、奥ほど薄くなっているのがわかりますか?
三段くらいになっていますね。
こんなふうに雲の色が段々になっているときは、
「これから荒れてくるぞ」
というしるしだそうです。
漁師の知恵ですね。
ちなみに今日は気持ちいいくらい晴れていますが、沖はうねっております。
白波寄せています。
昼に持てるかどうか…。
さて、こないだ探偵ナイトスクープを見ていたら、
「ざ行が発音できない母」
という依頼が来ていました。
兵庫県の方なんですが、「ざじずぜぞ」が、「だぢづでど」になってしまうらしいんですね。
ザ行がダ行になってしまうんだそうです。
なので、孫の名前が「禅(ぜん)ちゃん」なのですが、祖母が言うと「でんちゃん」になってしまう。
「お宅のお孫さん、名前は何ていうの?」
「でんです」
「え?」
こんな会話が、ご近所で繰り返されてきたそうです。
アナウンス学院の先生も必死で教えて、何とか矯正できたようですが、最後、「ぜんちゃん」と言えたときには、この祖母の目に涙が浮かんでいました。
西田敏行局長の目にも涙が浮かんでいました。
まあそれはいつものことなんですけども(笑)。
こういうケースは珍しいことではなく、例えば沖縄だとカ行がタ行になったりします。
これは、実は発音のしやすいほうに寄っていっているんですね。
カ行よりもタ行のほうが発音しやすいのです。
その証拠に、赤ちゃんはなかなかカ行が言えません。
まだ舌足らずに、「ネコ」が「ネト」になったりします。
番組を見ながら、そういえば尾鷲でも同じようなことがあるなぁ…と感じました。
もっとも、「発音のしやすさ」ではなく、「古い発音が残っている」ことからくる方言ですし、しかももう消えかかっているんですけども。
尾鷲のジイヤン・バアヤンは、「せ」が「しぇ」に、「ぜ」が「じぇ」になります。
ですから例えば、
「先生(せんせい)」が「しぇんしぇー」
「千円(せんえん)」が「しぇんえん」
「全然(ぜんぜん)」が「じぇんじぇん」
「戦前(せんぜん)」が「しぇんじぇん」
になるんですよ。
もし尾鷲で「禅ちゃん」という孫が生まれたら、その祖父母は、「じぇんちゃん」と呼ぶでしょう(笑)。
高校時代の教頭先生は、わかりやすい尾鷲弁でしたので、校内放送でいつも、
「しぇんしぇーがた、しぇんしぇーがた、職員会議を開きますので、職員室に集まってください」
とアナウンスされていました。
では、「果たしてこの「しぇ」「じぇ」がいったいどこから来たのか?」ということなんですけども、その答えは意外なところにありました。
実は、もともとは「しぇ」「じぇ」が標準語だったのです!
「えー?!」
と驚く気持ちはよくわかります。
まあ私の話を聞いてください。
室町時代から安土桃山時代にかけて、日本にはポルトガル人がやってきて、キリスト教、銃などが伝来しました。
昔、歴史の授業で習いましたよね。
イエズス会。
フランシスコ・ザビエル。
1549(いごよく)広まるキリスト教。
その当時、宣教師らは日本でキリスト教を広めるため、まず身につけなければいけないことは、「日本語」でした。
キリストの教えを伝えるために、日本語を学ばなければいけません。
今の時代、駅前留学すれば済むのですが、当時はそうもいきません。
というか、はるばる海を越えて日本にやってくること自体が命がけです。
現代に例えると、月に行くようなものでしょう。
それでも、「神の教えを世界に」という一途な思いで、宣教師たちは世界に船を進めたわけです。
(もちろんそれ以外の目的もあったでしょうが)
そんな宣教師たちのために、「日葡辞書」という辞書が作られました。
この辞書には、約32000ほどの語彙が収録されています。
それによると当時の日本では、「せ」「ぜ」に当てはまるところに「しぇ」「じぇ」が使われていることがわかったのです。
サ行は、時代とともに変化してきたのですね。
当時の都は、京都です。
都で使われている言葉はすなわち、標準語です。
ということはつまり、「しぇ」「じぇ」は昔、標準語だったということなんですよね。
おもしろいことに言葉は、京都から同心円状に波及し、遠くに行けば行くほど古い言い回しが残っているのです。
尾鷲は紀伊半島にあり、直線距離で考えると京都から近いのですが、交通手段が限られた陸の孤島だったので、こういう古い言葉が残っているんですね。
残念ながら現在尾鷲で、この「しぇ」「じぇ」は、若い人たちのあいだではもうほとんど見られません。
70代以上に残っているだけではないでしょうか。
日本の言葉の歴史を感じることができる貴重な方言なのですが、きっと近いうちに消えてしまうでしょう。
ちょっと寂しい気もしますが、言葉は時代とともに移り変わるものですから、やむをえません。
そんなわけで、あなたもぜひ、尾鷲で(昔の)標準語を使ってみませんか?
BGMは、陰陽座の「おらびなはい」。
せっかくなので、方言が使われている歌を…。
あ、かなりハードロックなバンドなのでご注意を…。
「おらぶ(叫ぶ)」「ちばける(ふざける)」というのは、岡山方言です。
ちょっと前に、「ぼっけえきょうてえ」という本が出版されて話題になりましたが、あれも岡山ですね。
ちなみに「とても怖い」という意味です。怪談本ですね。
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